ヴィカス・スワラップの『ぼくと1ルピーの神様』。
18歳のウェイター、ラム・ムハンマド・トーマスが、インド版『ミリオネア』的テレビ番組で12の質問すべてに正解し、10億ルピーの賞金を獲得する。学校にも行っていない孤児のトーマスが、なぜすべての質問に答えられたのか――? 『ぼくと1ルピーの神様』は、そのトーマスの過去をたどりながら、彼が質問に答えられた理由を明かしていくという形で展開する。相当に波乱万丈だし、ひとつひとつのエピソードにはきっちりヤマとオチがあるし、おまけに謎解き的な要素もあったりするので、これはもう引きこまれずにはいられない。 孤児の少年が10億ルピーを獲得、なんてきくと、ものすごく華々しいサクセスストーリーのような気がするけれど、インドの現実を背景にしたトーマスの過去はあまりにも苛酷で、何度も目をそむけたくなる。死と貧困と不公平がいたるところに転がっている。 そんな苛酷な人生を生きてきたトーマスが、過去に受けてきた不当な扱いや侮辱を思い返す最後の葛藤には、胸をつかれる。クライマックスなので詳しくは書かないけれど、どんな人間も本来、彼のような結論にたどりつくものなのだと信じたい。 帯によれば、この小説は映画化が決定しているらしい。おもしろい小説がおもしろい映画になる確率は、12の質問すべてに正解する確率ほどではないにしてもかなり低いものなので、あんまり期待はしていない。けど、やっぱりちょっと楽しみだ。
by csiumd
| 2006-12-02 15:27
| 本
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