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小鳥たちが見たもの

ソーニャ・ハートネットの『小鳥たちが見たもの』。両親と離れ、祖母と暮らす少年エイドリアンの物語。

ほとんど両親に捨てられたも同然のエイドリアンは、厳しい祖母の家でいつも不安そうに、どこか怯えたように暮らしている。内気で感受性が強すぎるせいで、学校にも溶けこめない。仲間はずれとまではいかないものの、かろうじて友だちと呼べそうな相手はひとりだけで、彼の心が離れやしまいかと始終びくびくしている。

なんというか、ものすごく残酷な小説だった。といっても、話の展開が残酷というわけではない(そういう面もあるにはあるが)。心の奥のほうにしまいこんで見えないように蓋をしていたものを、容赦なく暴かれているような感じがした。

エイドリアンは「大きくなれば、いろんなことがもっとわかるようになるんだろうか」と悩む。私はエイドリアンよりはだいぶ大きくなっているけれど、彼の悩みや疑問のほとんどにきちんと答えられないし、彼の立場だったらどうするべきかもわからない。

結局、おとなになってわかるようになることなんて、実はそんなに多くはない気がする。わからなかったことがわかるようになるのではなく、わからないことから目をそらして、なかったことにしているだけなのかもしれない。

この本を読んでいたら、子どものころ、「自分の目に見える世界が、ほかの人の目に見える世界と同じものではないのかもしれない」という不安を感じていたことを思い出した。これを夜寝るまえにうっかり考え出したりすると、世界から隔離されたような気がして、怖くて眠れなくなったものだった。

この手の子ども特有の思い込みって、誰にでもあるものだと思う。『小鳥たちが見たもの』は、そういう恐怖や不安が全編に漂っている。

ちなみに、「自分に見える世界と人に見える世界が同じではないのでは?」という不安(というか疑問)は、いまでもたまにふと甦ることがある。やっぱり、どんなに大きくなっても、子どものころの不安や疑問は解消されないものなのかもしれない。
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by csiumd | 2007-01-27 22:15 |