セルビアのナイーヴ・アート

多摩美術大学美術館で開催中の『セルビアのナイーヴ・アート』展に行った。最初にこの情報を目にしたときから、「あ、これは好きそうだな」とは思っていたのだが、予想以上に好みのツボを直撃した。

「ナイーヴ・アート」というのは、旧ユーゴで生まれた民衆絵画のこと。この展覧会では、おもにコヴァチッツア村で活動する画家の作品が集められている。どれも農村の風景や農民たちの暮らしを描いた牧歌的で素朴な絵で、出典作品を1冊の本にまとめて「コヴァチッツア村の一年」とでもタイトルをつければ、そのまま絵本として通用しそうな感じだ。

若干の例外はあるけども、ほとんどがカラフルで楽しげで、東欧の民族衣装がそのまま絵になったような雰囲気がある。あのあたりの冬は相当厳しいだろうと思うのだけれど、雪の夜を描いた絵でも、不思議と温かな空気が漂っている。見ているだけで楽しくなる。

あまりにも気に入ったので、めったに買わない図録を買って帰った。こまごまとした絵が多いので、家で細部をじっくり見ていると、会場では見落としていたことがいろいろと見つかる。ちょこまかとした人物たちの動きがとても楽しい。

この展覧会の会場では、画家紹介のVTRが流れていた。言葉による説明はいっさいなく、民族音楽風のBGMにのせてひたすら村の風景と絵をオーバーラップさせる構成のVTRなのだが、これがすごくおもしろかった。このVTRを見ていると、写実的とはほど遠い絵なのに、村の風景や雰囲気を、そこで暮らす人の目線から確実に伝えていることがよくわかる。

絵というものは、技術うんぬんよりもまず、「何を見て、何を感じるか」ということが大きな意味を持つのだな、という印象を強く受ける展覧会だった。
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by csiumd | 2008-09-04 13:39 | アート
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